歯を失ったときのインプラント治療
進行したむし歯や歯周病、外傷などによって歯を失ってしまった際に、歯の機能と見た目を補うためにインプラント治療を行います。
インプラント治療では、歯を失ってしまった部分の歯槽骨に人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を装着します。顎の骨にしっかりと固定されるため、かみ合わせも天然歯と変わりなく、見た目も自然で美しい仕上がりにすることができます。
歯を失ってしまった場合に入れ歯やブリッジなどで治療することもできますが、インプラントは周りの歯にダメージを与えることがなく、噛み心地やフィット感・見た目の美しさなどが優れているため、近年はインプラントを選択される方が増えてきています。
このような方におすすめ
- 入れ歯に抵抗がある
- 周りの歯に負担を与えない治療がしたい
- 天然歯と同じように食事や会話を楽しみたい
- 健康な歯を削らずに治療したい、ブリッジはしたくない
- 違和感のない自然な見た目にしたい
歯が抜けたまま放置することのリスク
歯並びやかみ合わせが乱れる
歯が抜けたまま放置すると、空いたスペースを埋めるために隣の歯が傾いてきて、歯並びを乱してしまいます。
歯が正しい位置からずれてしまうと、かみ合わせにも不調を引き起こします。正しくかみ合うことができなくなると、噛む力のバランスが悪くなったり、顎関節に負担をかけ顎関節症を引き起こしたり、特定の歯に過度な負担がかかり歯の破損が生じるリスクを高めてしまいます。
対向歯が伸びる
歯が抜けてしまうと、かみ合う歯がなくなったことによって、対向歯が徐々に伸びてきてしまいます。歯が伸びてきてしまうと、歯根が露出ししみたり、痛みを感じたり、むし歯になりやすくなってしまいます。
また、かみ合わせも悪くなり、ものをしっかり噛めなくなってしまいます。かみ合わせの不調は全身にさまざまな影響をもたらすおそれがあります。
顎関節症の発症リスクが高まる
歯が抜けたまま放置していると、かみ合わせのバランスが悪くなり、顎関節に過度な負担がかかるようになります。そうすると、口を開け閉めする際に痛みが生じたり、口を大きく開けることが困難になったり、口を開けると音が鳴るなどの症状が出る顎関節症を発症することがあります。
顎関節症によって慢性的な痛みや不快感が続くと全身にさまざまな悪影響を及ぼします。
歯周病リスクを高める
抜けた歯を放置していると、空いたスペースに食べかすや歯垢が溜まりやすく、歯周病になりやすくなります。また、歯が抜けていることで周囲の歯や歯茎にかかる負担も大きくなるため、さらに歯周病リスクを高めます。歯周病は自覚症状が出にくいので発見が遅れることが多く、気付かないうちにかなり進行してしまい歯槽骨にまで影響を及ぼすケースが多いです。歯周病は進行すると、周りの歯も抜け落ちてしまうおそれがあるだけでなく、糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞、認知症などさまざまな病気のリスクを高めます。
偏食・栄養不足・消化不良
歯が抜けたままだとうまく物を噛めなくなるため、硬いものなど咀嚼が多く必要な食べ物を避けるようになる傾向があります。そして柔らかいものばかり食べていると栄養バランスが崩れ栄養不足になってしまいます。栄養不足は体力低下や免疫力の低下、血糖値・血圧の異常などにもつながります。
また、あまり噛まずに飲み込む癖がつくと、慢性的に消化器官に負担がかかり、消化不良を起こしてしまいます。
発音や滑舌にも影響が出る
歯が抜けてその部分に隙間が生じてしまうと、空気が漏れてしまうため、発音しにくくなってしまいます。特に前歯が抜けてしまうと、「サ行」「タ行」の発音が難しくなります。発音や滑舌が悪くなると人とのコミュニケーションが取りにくくなり、日常生活にも悪影響を及ぼします。
インプラント・入れ歯・ブリッジの比較
インプラント | 入れ歯 | ブリッジ |
◎Merit
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◎Merit
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◎Merit
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△Demerit
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△Demerit
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△Demerit
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インプラント治療の流れ
1カウンセリング
まずはカウンセリングを行い、患者さんのお悩みやご希望を伺います。インプラント治療についての詳しい内容とメリット・デメリット、治療方針、費用の目安などを分かりやすく丁寧に説明いたします。
インプラント治療を行うにあたって、事前にむし歯治療や歯周病治療が必要な場合には、そちらの治療についてもご提案させていただきます。
2精密検査
歯科用CTやレントゲンなどを用いて検査を行います。歯の状態や顎の骨の状態、かみ合わせの状態、歯周病の有無など、口腔内の状態を詳しく把握します。カウンセリングと検査結果に基づいて、適した治療計画を作成していきます。
3治療計画の説明
カウンセリングと精密検査の結果に基づいて作成した治療計画を詳しく説明いたします。いくつか選択肢がある場合には、それぞれのメリット・デメリットなどもきちんと説明します。患者さんが十分に理解できるよう丁寧に分かりやすく説明し、納得していただいたうえで治療方法を決めていただきます。
4インプラント埋入(一次手術)
顎の骨に人工歯根のインプラント体を埋め込みます。
麻酔をしてから歯茎を切開し、顎の骨に穴をあけ、そこにインプラント体を埋め込みます。麻酔をして行うため痛みはほとんどなく、傷口も糸で縫合します。約1週間後に抜糸と消毒を行った後は、インプラント体が顎の骨と結合し、しっかり固定されるのを待つために、3〜6ヶ月ほどの待機期間を設けます。
待機期間中に痛みや違和感を強く感じる場合には、すぐにご相談ください。
5アバットメント装着(二次手術)
再び歯茎を切開し、顎の骨とインプラント体がきちんと定着しているかを確認します。そして、埋入したインプラント体の先端に、人工歯を固定するための土台となるアバットメントを装着します。
切開した歯茎の状態が落ち着くまで1〜2週間ほど待ちます。
6人工歯の装着
歯茎の状態が整ったら、人工歯を装着します。人工歯は型取りを行い、患者さんのお口の状態やかみ合わせ、他の歯との色味などに合わせて作製します。
7定期検診・メンテナンス
インプラントは天然歯と同様に定期検診でのメンテナンスが必要です。特にインプラント周囲炎を起こさないよう注意しなくてはいけません。
毎日の丁寧なホームケアと、定期的な歯科医院でのメンテナンスを行い、健康な口腔内を維持しましょう。
骨の少ない方への骨造成
顎の骨が不足している場合、そのままインプラントを埋入すると固定が不十分になり、脱落やトラブルの原因となります。特に上顎は「上顎洞」という空洞があり、骨が薄いことが多いため注意が必要です。
そのため、サイナスリフトやソケットリフトなどの骨造成術を行い、骨の厚みを確保することで、安全で長持ちするインプラント治療が可能になります。骨造成は高度な技術を要し、対応できる歯科医院は限られています。当院では、豊富な経験を活かし、骨の少ない方でも安心して治療を受けていただけるよう努めています。
サイナスリフト
サイナスリフトは、上顎の骨の厚みが5mmよりも薄い場合や、欠損している歯の骨の範囲が広い場合に行う骨造成術です。
上顎洞を直接持ち上げ、骨補填材を入れて骨造成を行います。個人差はありますが、6ヶ月〜1年ほどの期間を置いて、骨が作られ安定するのを待ち、その後にインプラント治療を進めることになります。骨造成を行う量や範囲が大きいほど骨の定着に時間を要します。
ソケットリフト
ソケットリフトは上顎洞拳上術といい、上顎の骨の厚みが5mm以上ある場合や、範囲が狭い場合に適用される骨造成術です。
専用の器具を使って上顎洞の粘膜(シュナイダー膜)を押し上げて、そこに骨補填材を入れることで骨造成を行います。ソケットリフトはある程度の骨量があり、増やす骨量が比較的に少ない場合に適用される方法ですが、骨造成と同じタイミングでインプラント埋入を行うことができます。サイナスリフトよりも治療期間を短縮することができ、身体への負担も抑えることができます。
インプラント治療後のメンテナンス
当院では、ご自宅での正しいブラッシング方法を丁寧に指導するとともに、定期的なメンテナンスを行い、インプラントを健康に保つサポートをしています。安心して長く使い続けられるよう、しっかりとケアしていきましょう。